
環境ビジネスのシーズに事欠かない昨今、問題はいかにビジネススキームを実現するかだ。福岡県リサイクル総合研究センターでは、リサイクル技術等の研究開発やその展開を支援している。具体的には産官学民が連携した研究会や共同研究プロジェクトを実施して、中小企業の環境ビジネスを実現させるための積極的なサポートを行っている。

福岡県環境保全公社リサイクル総合研究センター(リ総研)は、リサイクル事業に関する日本初の政策推進型の公的支援機関として、2001年に北九州市に設置された。循環型社会の構築、リサイクル産業の振興を図るため、リサイクルに関する課題や技術開発などのニーズに対応した研究会や共同研究プロジェクトを編成し、リサイクル企業を支援している。
具体的には、リサイクルの実用可能性を検討する「研究会」(年間150万円以内、最長2年間)と、リサイクルの事業化、商品化など具体的な研究を行う「共同研究プロジェクト」(年間1000万円以内、最長3年間)だ。さらに、共同研究終了後も研究成果の地域展開や事業化までを含めた支援を行なっている。
シタマ石灰は、リ総研の支援のもとで、全国初の造粒状の乾燥剤リサイクル肥料の開発に成功した。
焼きノリや菓子などを湿気から守る乾燥剤として使用されている石灰乾燥剤は、食品とともに梱包されるため、厳格な管理のもとで製造される。その厳しさは、たとえわずかな混入物でもそのロット全ての乾燥剤が規格外となるほど。また、消費期限切れ食品の乾燥剤もメーカーに返品されるのが一般的だ。
福岡県内では、年間約120トンもの乾燥剤が回収されている。これらの乾燥剤は、乾燥剤メーカーが産業廃棄物として処分することになるわけだが、石灰は危険物なので処理費は割高で、処理費が事業を圧迫するほど頭の痛い問題となっている。
一方、廃棄される乾燥剤は、何重にも金属探知機にかけられてチェックされた純度の高い生石灰だ。シタマ石灰取締役社長の舌間常雄氏は「高品質の生石灰をセメントの原料や廃棄処分にするのは惜しい。せっかく再利用するなら、どこにもないものを作りたい」と考え、リ総研に相談した。
相談を受けたリ総研では複数の企業、研究機関からなる「乾燥剤リサイクル研究会」を立ち上げた。シタマ石灰は乾燥剤の造粒消石灰へのリサイクル技術を開発。福岡県内の乾燥剤メーカー、大江化学工業と筑後物産は乾燥剤の分別保管方法を検討。福岡県工業技術センターは乾燥剤のリサイクル品の規格試験を請け負った。そしてリサイクル品の流通・販売元として、JA全農ふくれんが参加。リ総研のコーディネートにより、リサイクル事業で課題となる、原料の供給から販売ルートまでを押さえたメンバーが名を連ねた。

産学連携センタービル。4階に位置するリサイクル総合センターは、日本初の政策推進型公的支援機関だ

(1)造粒機 粒状に固めて仕上げる (2)右側に袋の破砕機、その後ふるいにかける (3)袋を破砕した後で、円状の機械でごみと乾燥剤をわける
農業用の石灰肥料では、酸性土壌の改良や植物の栄養吸収の助長に用いられる消石灰が一般的。だが、消石灰は粉末なので撒布時に飛散するのが問題だった。石灰はアルカリ性なので、目や粘膜に悪影響を与え、最悪の場合は失明することもある。
研究会が開発した造粒消石灰は底面約5mm四方、長さ約0.5〜1.5cmの立方体。消石灰のバインダーとして廃棄された生石灰を数%混入することで、固形化に成功した。固形なので撒布時に飛散する心配のない、環境にも人にも優しい石灰肥料だ。従来の撒布機での作業が可能で、農家は気軽に導入することができる。
だが、この造粒消石灰の完成までにはいくつかの課題があった。
例えば、乾燥剤は食品とともに梱包されるため、内容物が漏れないように頑丈な袋に入れられている。まずはその頑丈な袋を破る機械や、生石灰の塊を微粉化する機械の開発が必要だった。
最も大変だったのは、生石灰の混入割合をみつけることだった。肥料は撒布後に土中にまんべんなく混じらねば用をなさない。結合剤として混入した生石灰は、水分を含むと熱を発しながら膨張し粉状に戻る性質がある。つまり造粒消石灰は、撒布時は固形でも、撒布後には土中の水分を吸収し崩壊して粉状に戻り、まんべんなく土と混じることができるのだ。だが、生石灰が熱を発しすぎると作物に悪影響が出る。つまり、固形化している肥料を崩す最適な生石灰の割合を探し当てる必要があった。このような数々の課題をクリアして日本初の造粒消石灰肥料は完成し、製法特許を出願するに至った。
造粒消石灰肥料は、昨年4月1日からJA全農ふくれんを通じて販売を開始した。評判は上々で、シタマ石灰は今年新たに全国農業協同組合と契約、着々と九州一円に市場を拡大している。また、リサイクル原料も、九州圏内を始め中国地方の乾燥剤主要メーカーまで取引を拡大。現在は供給体制を整えるため、福岡県循環型社会推進課の補助金を得て、製造ラインを増設中と、順風満帆だ。
「研究会というチームを組んで研究開発を行う、リ総研の支援制度が何よりもありがたかった。1社ではどうにもならないことでも、チームで知恵を出し合えば解決できますから」と舌問氏は話す。
| ■シタマ石灰 | 乾燥剤を利用した造粒消石灰の製造法の開発 |
|---|---|
| ■筑後物産 ■大江化学工業 |
乾燥剤の提供、分別保管の研究 |
| ■福岡工業技術センター | 消石灰の規格試験等 |
| ■JA全農ふくれん | 販売網の整備 |
JAの資材配送センターに積まれた造粒消石灰Copyright (c) 2010-2012. Shitama inc. All Rights Reserved